「スモールトーク」50代男性へのおすすめ度
★★★☆☆ ← 50代男性が読むと新しい発見があるはず
あらすじ
内容紹介(「BOOK」データベースより)
昔の男はオレンジ色のTVRタスカンに乗って現れた。
会いたくなんかなかった。ただどうしてもその車が見たかった。
以来、男は次から次へと新しい車に乗ってやってくるようになった。
ジャガー、クライスラー、サーブ、アストンマーティン、アルファロメオ…。
長い不在を経て唐突に始まった奇妙で不確かな関係の行き着く先は。
勤め人時代を描いたエッセイ及び掌編小説「ダイナモ」併録。目次(「BOOK」データベースより)
スモールトーク(TVR Tuscan/Jaguar XJ8/Chrysler Crossfire/SAAB 9-3 Cabriolet/Aston Martin Vanquish/Alfa Romeo Alfa GT/ダイナモ)/エッセイ(カローラバン・スーパースペシャル/カローラバンその2/マーク2を追いかけろ!/ごめんねビート/見てくれだけのダメグルマ/馬には乗ってみよ)
キーワード
ドライブ、ドライビングテクニック
感想
車の運転が好きで、ついでに女を抱くのも好きなおっさんにピッタリ。
絲山秋子さんの小説を読むのは「スモールトーク」がはじめて。
7つの短篇の連作と、6つのエッセイ。
横書きの本。
横書きでも、女の子らしい文体ではなかったので、 私のような50代のおっさんでも読みやすかった。
作者の絲山秋子さんは、車の運転が好きらしい。
7つの短篇について
女主人公(それなりの年齢の女性画家)が、おっさんにもてあそばれる小説。
おっさんは、女主人公の元カレで、音楽プロデューサー。
女主人公は車の運転が好き。
元カレが毎回違った車を乗りつけてきて、女主人公に運転させる7つのストーリー。
上記の「目次」にある車を女主人公が運転します。
女主人公が、ドライブ中に車の操作感・フィーリングを語ります。
その表現は、まさに車の運転が好きな人間の語り口です。
小説で、車の運転のフィーリングを語る女性は珍しく、 運転好きな男性は好感が持てると思います。
ところどころエッチなシーンや語りもあるので、 車好き・女好きのおっさんは読みごたえ充分です。
エッチが終わったあとの 「味噌汁についての男女のやり取り」は、 こんな一面もあるのかと震えました。
読んでから2年が経ちますが、今でも印象に残っています。
6つのエッセイについて
営業車で外回りをしているおっさんは気に入ると思います。
エッセイには作者、絲山秋子さんの 会社員・営業時代のエピソードが書かれています。
一日中、社用車で得意先まわりをしていたようです。
自分専用の社用車に愛着がわき、クリマを「育てる」という感覚でならし運転をするエピソード。
営業所で一番運転が上手い社員がなれる 「新年の挨拶回りのドライバー」に、自分が選ばれたときのエピソードなど。
「ホントにこの人は車の運転が好きなんだな。」と思わせるエピソードがたくさん書かれています。
とくに「クルマを操る足の感覚」について、とてもうまく文章にされていて、心に残っています。
私が気に入った文章
「だって俺、いつも嘘に囲まれててさ」(音楽プロデューサーの元カレ)
「モノ作ってる人間がそんなこと言うもんじゃないよ」(女主人公)
(85ページ)
嘘にまみれたモノを作ったり、売ったりするな!
という意味でとらえ、この文章にハッとしました。
自分への戒めとして、今後も気を付けます。
今回は、車の運転が好きな50代男性にぜひ読んでもらいたい「スモールトーク」の紹介でした。
他にも、絲山秋子さんの小説の感想を書いています。