「おまじない」50代男性へのおすすめ度
★★★☆☆ ← 気に入った短編を娘さんに薦めてみて
あらすじ
内容紹介(「BOOK」データベースより)
「あなたは悪くないんです。」(「燃やす」)
「私たちは、この世界で役割を与えられた係なんだ。」(「孫係」)
「弱いことってそんないけないんですか?」(「マタニティ」)
-さまざまな人生の転機に、まじめさゆえに孤独に思い悩んでしまう女性たちの背中をそっと押して、新しい世界に踏み出す勇気をくれる魔法のひとこと。
珠玉の八編、ついに文庫化! 巻末に長濱ねるとの特別対談を収録。
感想
この娘の気持ちよくわかるわ
「おまじない」は、8編の短編小説で構成されています。
私は「孫係」が面白かった。
他の短編もそれなりに面白い。
女性作家(特に若い)にありがちな、ちゃらちゃらした文体ではなく、
万人向けのしっかりとした文章なので、50代男性のおっさんでもちゃんと読めます。
私が読んだのは単行本。
【西加奈子×長濱ねる 特別対談収録】の文庫本が発売される前でした。
この短編作品「おまじない」のペルソナは、30代前半までの女性と推察されます。
なので、おっさん向けには書かれていません。
50代男性が読むときは、
自分に向けて書かれていないことを理解して読んでください。
50代のおっさんが「おまじない」を読むときの心構え
では50代男性は、
どんな心構えで「おまじない」を読んだらいいのでしょうか。
「自分の娘に薦めるなら、どの短編がいいかな」という心持ちで読んでみてください。
なぜなら、若い女性読者の反響がとても良い作品だからです。
そうです。
「おまじない」を読んで娘の気持ちをグッと父親に引き寄せよう作戦です。
「この短編が面白かったから読んでみて」と、
自分の娘に薦めるなら、どの短編がいいだろうと思いながら読んでください。
そして、娘さんに自分の気に入った短編を薦めてください。
(私の場合は「孫係」でした。)
お父さんは、
「この短編、面白いから読んでみて」と娘に薦めます。
娘さんは、
「お父さんが私のために本を薦めてくれた」と感激します。
読み終えた娘さんは、その短編の女の子の気持ちに共感し、
「私のお父さんは、若い娘の気持ちがわかるんだ」と父親を見直します。
若い娘の気持ちがわかるお父さんは、娘さんから一目置かれること間違いなしです。
娘さんとのコミュニケーションツールとして
実際わたしは、
「孫係」を高校3年生の娘にすすめ読んでもらいました。
娘の感想は、
「この娘の気持ちよくわかるわ」でした。
「自分と一緒だ」とも言っていました。
このように、娘さんとのコミュニケーションツールとして
「おまじない」を手に取り、読んでみて、活用するといいと思います。
きっとお父さんの評価もランクアップすると思いますよ。
「おまじない」は小説として面白いので、読めば若い女性との接点になると思います。
50代男性のおっさんも、娘さん云々は別として、一読されることをお勧めします。
「いちご」だったと思うけど、モデルになる女の子の話も良かったです。
男と女のやっかいな部分の表現が上手い
西加奈子さんの作品は、この「おまじない」がはじめてです。
随所に「いいな」と思える文章がたくさんあって良い本でした。
西さんは、
「男と女のやっかいな部分を、読みやすく・理解しやすい文章で表現できる稀有な作家さん」
だと感心しました。
・異性という視点で「女は男にこう見られている」
・性的な視線で「男は女のここをみる」
という、
文字で表現するのがやっかいな男女の習性を、
読みやすく・理解しやすい文章で、作品に取り入れるのがとても上手い。
それも結構ピンポイントで。
「ああ。こんな風に女の人を見ることってあるよな。」と、
おっさんでも共感できる文章がけっこうありました。
さらに、
おっさんにはわからない、理解できない女性の感覚を知ることもできました。
おっさんの行動まで理解している
「燃やす」という短編に、
自分もそうするだろうなと思わせるエピソードがありました。
おっさんが、小学生高学年の女の子をさけて行動するエピソードです。
「自分も逃げちゃうかも」と思い、さけるという行動に共感しました。
ある年頃の女の子と遭遇しないように意識的に行動するおっさん。
「自分にあらぬ疑いがかからないようにする。」っていうのが目的なんだけど、
同じ行動をするおっさんたちを、他の作家さんの小説でも読んだことがありました。
今読んでいる、イギリス人作家の本にも似たニュアンスの文章がありました。
「年端もゆかぬ女の子にちょっかいを出している変な男に見られないようにする。」
という、おっさんたちの行動は、世界共通のようです。
こんなおっさん達の行動まで把握しているなんて、すごい。
やっぱり作家さんはたくさん本を読んで勉強されているんでしょうね。
あと、「燃やす」でも登場する
女の子がスカートに男の「アレ」をかけられてしまうエピソードも昔からよく目にします。
多くの女性が成長の過程で経験した「イヤ」なことを上手に文章にして、
直木賞作家のテクニックで短編にまとめたのが「おまじない」です。
多くの若い女性から共感を得ているのも納得です。
私が気に入った文章
ハンサムではなかった。でも、好ましい清潔感があった。(144ページ)
愛された人間特有の健やかさを感じることがあった。(227ページ)
いい文章ですよね。
さすが直木賞作家です。
今回は、50代男性にぜひ読んでもらいたい「おまじない」を紹介しました。
「西 加奈子」さんのように、「直木賞を受賞した女性作家」さんの小説を他にも紹介しています。
下記の画像をクリックしてぜひ併せて読んでみてください。
【直木賞を受賞した女性作家の小説】