物や思い出を大事にするのは大切なことです「モノガタリは終わらない」

モノガタリは終わらない 小説

「モノガタリは終わらない」50代男性へのおすすめ度

★★★☆☆ ← 好奇心旺盛な50代男性向け

あらすじ

内容紹介(「BOOK」データベースより)
「捨てない」から始まるショートストーリー集。お題は「捨てない」、ただそれだけー。
21名のベストセラー作家が、モノの歴史をつむぎ、人の記憶をひもとく。
物語のプロフェッショナルが織りなす“技”と“筆致”を余すところなく堪能できる、超豪華アンソロジー! メルカリ公式Twitterにて話題の連載、待望の書籍化。

キーワード

モノ

各短編の感想

21名の作家の短編を収録したアンソロジー。

テーマは「モノ」(物)だと思って読んでいたら、違ってました。

“お題は「捨てない」”だそうです。

まあ、人それぞれ感じ方は違いますからね。

21人も作家さんがいれば書く文章も個性があります。

今回は、短編ごとに感想を書きます。

中でも、星4つの短編は、ぜひ読んでみてください。


1.いい人の手に渡れ! 伊坂幸太郎

星2つ

この話も、好みのストーリーでなかった。

伊坂幸太郎さんとはどうも相性が悪い。

これまでに数冊(3冊か4冊)の小説を読んだが、どれも自分には合わなかった。

それなのに、どうして3冊以上読んでいるのか。

それは、コロナ渦の頃、暇にしていた息子に読んでみろと文庫本を渡され、感想を求められたから。

「次はこれ」といって少なくとも2冊は読まされた。

それ以降、伊坂幸太郎さんの小説は読んでいません。

2.人間の友 三浦しをん

星3つ

よかった。

三浦しをんさんの文章を読むのは初めてだと思う。

「なよなよとした文章を書くのかな」と、勝手に想像していたが違った。

しっかりとした言葉で書かれた好みの文章で、気に入りました。

次は、三浦さんの評価の高い小説を読んでみたいです。

3.吉凶の行方 朝井リョウ

星3つ

よかった。

朝井リョウさんの小説は、これまでに3冊(もしかしたら4冊だったかも)読んだけど、どれもよかった。

今一番お気に入りの作家さんだし、相性が良いのだと思う。

短い話もよかったので、朝井リョウさんの短編小説も読んでみたくなりました。

気に入った文章

「忘れたくない日にまつわるものは、取っておいてるだけ」(35ページ)

私も、この傾向があります。


この他にも「朝井リョウさんの本」を紹介しています。併せて読んでみてください。

【朝井リョウさんの本】

こんな質の情報発信もアリなのかと戸惑う人へ「スター」朝井リョウ

スター 朝井リョウ

4.RPGノート 藤崎彩織

星4つ

面白かった。発想がいい。

大人が、子供のワクワクをこんなにも恥ずかしげもなく書けることに感心した。

RPGのストーリーは、友達の家でゲームをやらせてもらって覚えた、ということにしておきます。

気に入った文章

急に高い声を出した時子の「まいどあり~」は、駅にあるお肉屋さんの言い方と同じだった。
三人でコロッケを買いに行くと、シューマイを三つおまけしてくれるお店だ。(42ページ)

子供の頃お使いで、おまけをくれる店に行ったのを思い出しました。

「RPGノート」ぜひ読んでみてください!

5.0.8 吉田修一

星3つ

よかった。

吉田修一さんの文章を読むのは初めてだと思う。

拾った仏像のご加護なのか、自分の念が込められたのか、曖昧なところがいい。

気に入った文章

離婚した直後、自分がどうやって日曜日を過ごしていたのか分からなくなった。(49ページ)

これが冒頭の文章。

主人公の現状がスッと理解できました。

芥川賞を受賞した作家さんのさすがの文章力だなと思いました。

6.一人で二つ 絲山秋子

星4つ

面白かった。

モノについての作者の考えが明確に伝わってきた。

絲山秋子さんの小説は、全部好みという訳ではないものの、4冊くらい読んでいると思う。

共通して言えるのは、読みやすい文章ということ。

この短編も読みやすかった。

気に入った文章

なにがあっても一人で対処するって、どうなんだろう。
「備えあれば憂いなし」と心の姑は言うけれど、リスク回避ばかりに手間がかかって前に進めないような。
ちょっと大袈裟な言い方になるかもしれないけれど、備えが充実すればするほど、人生が停滞していく気がするのです。(58ページ)

「身構えちゃって、備えすぎて、縮こまってしまう」ことを言っているのだと思いました。

備えてばかりだと、チャレンジできない。

現状維持だと「足踏みで人生終わっちゃうよ」と言うことですね。

絲山秋子さんて、こういう表現が上手いんだよね。

「一人で二つ」ぜひ読んでみてください!


この他にも「絲山秋子さんの本」を紹介しています。併せて読んでみてください。

【絲山秋子さんの本】

袋小路の男 絲山秋子  逃亡くそたわけ 絲山秋子 イッツ・オンリー・トーク 絲山秋子 

スモールトーク 絲山秋子

7.ボタンと使者 角田光代

星3つ

よかった。

角田光代さんの文章、雑誌のコラムを読んだ記憶はあるが、小説を読んだことはありませんでした。

「ボタンと使者」を読んで、独特な文章表現をされる作家さんだと思いました。

ミステリーっぽい文章でもあるし、随筆のような文章でもあるし、不思議な揺らぎを感じる文章に興味が湧きました。

近いうちに、角田さん代表作を一度読んでみようと思います。

気に入った文章

持ち主がいないのに持ちものが残る。
そのことのかなしさと残酷さを思い知ったからである。(68ページ)

「残酷さ」までは理解できなかったけど、「故人が大事にしていたモノや、愛用していたモノを、いつまでも取っておく必要はない」という作者の意見に賛成です。

大事にしていたのは故人であって、その家族ではないのだから。

家族が引き継いで、使えるモノであればそのまま使うべきだと思います。

ですが、使えないのであれば誰かに再利用してもらう方がいい。

その方が、今の時代に合っていると思います。

8.珊瑚のリング 吉本ばなな

星2つ

ちょっと残念。

吉本ばななさんの文章、何かで(雑誌か本で)読んだことはあると思うけど、これまで積極的に手に取って読んだことはありませんでした。

この短編を読んで、その理由がはっきりした感じがします。

この短編、ねちっこすぎて自分には合わなかった。

この前の角田光代さんの短編と、遺品整理の話が2話続きました。

女性は、モノを処分する事を考える時、どうしても遺品のことを思ってしまうのでしょうか。

気に入った文章

「中略・・・。お父さんはお母さんのものならなにを見てもつらかったんだと思うし、そういう考え方の人もいるしね。」(78ページ)

亡くなった方のモノの処分(遺品整理)は、ダラダラしない方がいいと思います。

9.花魁櫛 筒井康隆

星3つ

まあまあかな。

くしくも3話続けて遺品整理の話を読んでしまった。

これは女も男も関係ない。

もしかしたら、ある一定以上の年齢になると「モノの処分=遺品整理」になってしまうのかもしれません。

自分もそうなのかな。

ちょっとやな感じです。

さて、筒井康隆さん、中学時代に何冊かの小説を読みました。

それも気に入って読んでいました。

きっかけは中学の友達に進められて読んで、筒井ワールドにはまったように記憶しています。

それから数十年、おそらく30年以上ぶりに筒井さんの短編を読みました。

相変わらずの皮肉が効いた文章がよかったです。

10.初恋の 川上未映子

星1つ

つまらなかった。

それで?って感じ。

自分勝手な文章を書く人だなと思った。

引用 1.

恨みっていう言葉が頭に浮かんだと思うけど、そもそも念と恨みがじっさいどう違うのか、それもよくわからない。
初恋の恨み、初恋のかたまり、恨みのかたまり。なんだか、いやだな。(90ページ)

自分で書いてるんでしょ。いやなら書くな!

引用 2.

なぜマフラーだったのか。それは、自分の頭で何も考えていなかったからだ。
女の子がバレンタイン・デーに好きな男の子に手作りの何かを贈るという場合、
買ってきた大量の板チョコを湯煎で溶かしてまたべつの枠に流し込んで冷やして固める、
その過程にいったい何の意味があるのか未だに不明の手作りチョコか、だいたいが手編みのマフラーで、それ以外の選択肢は存在しないも同然だったのだ。(97ページ)

アホな文章ですが、言いたいことはわかります。同意見です。

私も高校3年の時にマフラーとチョコをもらいました。重かったです。

引用 3.

けっきょくわたしは、マフラーを完成させることも捨てることもできず、そのままにした。
最後は異常な長さになって、絨毯のうえに巨大な渦巻きをつくり、わたしはその中心でいつも彼のことを思っていたのだ。(99~100ページ)

キモいよ!

11.消しゴム 岩井俊二

星3つ

よかった。

さすが、映画監督の書く文章は違うなと思いました。

映画を観ているように、目の前に次々と映像が繰り広げられる文章に感心しました。

私には、こんな文章は書けそうにありません。

営業担当の会社員が主人公の話。

妻と息子との家族旅行をかけて、仕事をいかにこなすかがポイント。

引用 1.

自分たちの大切な企画が却下される瞬間は、我が子が全否定されたかのようで辛い。
(105ページ)

これは良く分かる。

仕事をしていると必ずあることだけど、何度経験しても辛いです。

引用 2.

それ以上に、我が子に対してかくも戸惑っている自分に、私は途轍(とてつ)もない戸惑いを感じてしまったのであった。
無口な息子を前にすると、どうしても、こちらまでよそよそしくなってしまい、そんな父の雰囲気を察してか、息子はますます居心地悪そうになる。(108ページ)

私にも息子がいます。

この気持ちよくわかります。

引用 3.

妻の言葉は厳しい。しかしその通りだ。
そして家族としっかり向き合えない私の言葉は、何を言っても薄っぺらいのであった。
(110ページ)

会社を辞めてやるなんて、できもしないことを簡単に言ってしまう。

そういう時もありますよ。

引用 4.

私はテーブルに散らばった紙切れを改めて一枚ずつ指でつまんで眺めた。
そこに書き連ねられた細かな文字が、無口なあいつが一生懸命書いたその文字が、その一枚一枚が、何やら息子が私に宛てた手紙のように思えて、泣けてきた。(115ページ)

いいですね。

心を打つ文章です。

12.封印箪笥 綿矢りさ

星2つ

まあまあかな。

若い女の子がメインキャラで、女の子が服の話をするストーリーを、今も書き続けているんだなと思った。

前に読んだ本がそうだったから。

チャラい文章を書くのが好きな作家なんだと思う。

それが作家の個性なんだから仕方ないのですが。

この話でも「遺品整理」というワードが出てきました。

「モノガタリは終わらない」が、だんだん「『遺品整理』ばかり思い浮かぶ作家が集まって書いた物語を収録した本」になっております。

引用

「・・・。さらの服を着ているときに、たとえばソースを引っかけたりすると、なんか申し訳ない気がするっていうか。前の持ち主が少し汚しているくらいの方が、気が楽なんだ」
(120ページ)

こんな人いるの?


この他にも「綿矢りささんの本」を紹介しています。併せて読んでみてください。

【綿矢りささんの本】

軽い文章がいい感じ「ウォーク・イン・クローゼット」綿矢りさ

ウォーク・イン・クローゼット 綿矢りさ

13.バタクランを越えて 金原ひとみ

星4つ

とても良かった。

久しぶりに、読後に物語の余韻を感じる、短編らしい短編を読んだ。

金原ひとみさんの文章を読んだのは初めてだと思う。

しっかりとした構成の読みやすい文章に好感を持った。

金原さんの本を一冊読んでみたくなった。

「バタクランを越えて」ぜひ読んでみてください!

14.ブルース・フォー・ポーギー 西川美和

星4つ

良かった。

2作続けて良い短編を読んだ。

「ふーん」って感じの良い余韻に浸ることができました。

西川美和さんのことをもっと知りたくなった。

本も読んでみよう。

「ブルース・フォー・ポーギー」ぜひ読んでみてください!

15.バイバイ 尾崎世界観

星3つ

ふつう。

「ふーん」だね。

何かと何かを掛け合わせているのかな。

「何か」は本文を読んで確認してください。

バンドマンのこととか良く分からないけど、バンドマンをヒモにする女の子はいるように思う。

この前の(西川さんの)短編あたりから、フリマアプリの出品に関するやり取りや、社名がはっきり記述されはじめたのは、スポンサーであるメルカリの意向なのでしょうか。

そうだとすると「メセナとしては、ちょっとセコイな」と思ったけど、メセナのはずないか、プロモーションだよね。

16.天井裏の時計 平野啓一郎

星3つ

ふつう。

平野啓一郎さんの小説は「ある男」を読んだだけ。

「ある男」も、この短編もそうだけど、文章の感じが自分とは合わない。


この他にも「平野啓一郎さんの本」を紹介しています。併せて読んでみてください。

【平野啓一郎さんの本】

根っからの善人なのに周りが認めてくれない「ある男」平野啓一郎

ある男 平野啓一郎

17.彼女の武装 江國香織

星3つ

ふつう。

あえて何を何年とは書きませんが、私も自分は物持ちがいい方だと思っています。

18.がらくた 太田光

星3つ

ふつう。

芸人とか、芸能人が書く小説って、どこか自伝的なものを感じさせる内容がほとんど。

この短編もそうだった。

19.誰がために、鈴は鳴る 水野良樹(清志まれ)

星2つ

どうでもいいように感じた。

20.内緒 恩田陸

星4つ

良かった。

「スキマワラシ」の兄弟にまた会えるとは思っていなかったので嬉しかった。

恩田陸さんの小説は4冊くらい読んでいると思う。

やっぱりプロの作家の文章はちがうね。

いいところを見せてやろうとか、自分も短編ぐらい書けるんだぜ、みたいな、他分野の人間が書いた文章と違って、必死さを感じさせない力の抜けたような文章なのに、とても上手。

引用 1.

『アルジャーノンに花束を』と、『ライ麦畑でつかまえて』。
兄は「うっ」という、声にならない声を上げた。
「おおお、全世界の若者の永遠の課題図書じゃないか」(225ページ)

ここを読んだとき、自分も「うっ」と吹き出しちゃいました。

なにしろ2冊とも自宅にあるもんで。

恩田陸さん自身もこの2冊を「永遠の課題図書」と思っているのかな?

だとしたら、やっぱり同年代なんだな。

引用 2.

小野田君の字は、癖字だった。
ちょっと平べったく潰したような字で、ものすごく筆圧が強い。
対照的に、下に書かれた片野篤子さんの字は、とてもすっきりしていて伸びやかだった。
いきいきした、屈託のない人柄が滲み出ている気がする。(228~229ページ)

いいですね。

恩田陸さんは、こういう、ちょっとした文章が上手です。

「内緒」ぜひ読んでみてください!


この他にも「恩田陸さんの本」を紹介しています。併せて読んでみてください。

【恩田陸さんの本】

蜜蜂と遠雷・祝祭と予感|恩田陸さんの小説2作品の感想

蜜蜂と遠雷 恩田陸

21.ジョーンズさんのスカート 山田詠美

星3つ

軽くて良かった。

ベテラン作家の余裕を感じられる短編でした。

山田詠美さんの小説は3冊くらい読んでいると思います。

「ジョーンズさんのスカート」は、けっこうサバサバした感じの文章で書かれています。

「こんな感じの文章だったかな?」と、山田詠美さんの文章(短編)を久しぶりに読んで思いました。

ちょっと離れると、すぐ忘れちゃうんです、最近。


ここで星4つをつけた短編は面白いので、ぜひ読んでみてください。

今回は、好奇心旺盛な50代男性に読んでいただきたい「モノガタリは終わらない」を紹介しました。

本書以外にも「短編小説」を紹介しています。

下記の画像をクリックして、併せて読んでみてください。

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