「拝啓 交換殺人の候」50代男性へのおすすめ度
★★☆☆☆ ← 新しい小説(ジャンル)にも目を向けたい50代男性向け
あらすじ
内容紹介(「BOOK」データベースより)
パワハラのトラウマに苛(さいな)まれる秀文は、退職から半年が過ぎても社会復帰できずにいることに絶望を感じていた。
首を吊るために朽ち果てた神社の桜の木にのぼると、白い封筒が大きな洞(うろ)に差し込まれているのを見つける。
“どうせ死ぬなら殺してみませんか?”と書かれた手紙は交換殺人の依頼状だった。
手紙を置いたのは白いセーラー服と紺色のスカートを纏った少女だと判明するが…。
奇妙な往復書簡の先に待つ殺人計画の顛末は!?天祢涼(アマネリョウ)
1978年生まれ。2010年、『キョウカンカク』で第43回メフィスト賞を受賞しデビュー。2013年、『葬式組曲』及びその収録短編『父の葬式』で、本格ミステリ大賞と日本推理作家協会賞各候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
キーワード
パワハラ、大学生、ユーチューバー、仕事、金
感想
天祢 涼(アマネ リョウ)さんの本を読んだのは、この「拝啓 交換殺人の候」がはじめて。
意図することなく、2冊連続で中学生レベルの本を読んでしまったため、この感想を書いている私は、ちょっと物足りなさを感じています。
・1冊目の中学生レベルの小説はこちら>> 最後の鑑定人
ライトノベルのような小説
「拝啓 交換殺人の候」の読みやすさと内容は、私からするとライトノベル程度でした。
中学生レベルの文章と内容なので、スラスラと読みことができます。
前半から中盤までは、文章の読みやすさと「交換殺人」の話の展開が新鮮で面白く、引き込まれるように読みました。
「交換殺人」を提案した女の子の登場の仕方、立ち居振る舞いが斬新でよかったです。
若者特有の物事に対する気軽さ、「あんまり深く考えてないでしょ」っていう感じも、今の子らしさを感じられてよかった。
ところが後半になって、登場人物たちの二面性があらわになり始めます。
そこから、ストーリーがつまらなくなりました。
登場人物たちの二面性
後半になってから、「実はこのAさんには、こんな一面もあります。気がつかなかったでしょ」という
二面性を持った登場人物が、Aさんだけでなく、次から次と何人も出てきます。
「えっ、この人もそうなの」「あの人もか」「急になんだよ!」という感じになりました。
これまで単純にストーリーを追って読んでいるだけでよかったのに、後半になってから急に、ミステリーの比重が大きくなり、読むスピードが遅くなってしまいました。
「なんだ、考えながら読まないといけないのか」となって、読むのがかったるくなりました。
それまでは平板なストーリーで、スラスラと読めていただけに、余計にかったるく感じました。
なぜ、余計にかったるく感じたのか。
それは、「ミステリーの要素が後出しじゃんけんそのものだったから」です。
- 特に謎解きしなくてもいいストーリーでした。
- 「この謎を解かないと先に進めない」というようなストーリーではありませんでした。
- 「交換殺人」をどのように実行するか、
それだけを物語の軸にしてトントン拍子に進めて終わりにできる物語でした。
それなのに、登場人物たちの二面性が物語に加わってきました。
しかも、提示されたミステリーは「ふーん、そうなの」レベルのミステリーでした。
物語の当事者(登場人物たち)しか気づくことができないようなミステリー(謎解き)なので、読者の私は謎だと思って読んでいませんでした。
「このミステリー要素、なくてもいいんじゃない?」ということです。
そのため、後出しじゃんけんに感じたのです。
ある意味、作者のテクニックなのかもしれませんが。
読者は特に疑問(謎)に思っていないことなのに、わざわざミステリーっぽくしてくれなくてよかった。
「実はこんな事実が隠されていました」と言われたところで、後出しじゃんけんにしか感じませんでした。
伏線がありすぎる
二面性のある登場人物が多くいすぎるのと同様に、伏線がありすぎます。
「こんなことまで伏線なの?」って感じで、感心するよりも、あきれてしまいました。
「日付と時間」「弱い人の気持ちはよくわかる」「君は、僕の一部を殺してくれたんだから」などのキーワードやセリフが、頻繁に出てきます。
伏線に凝りすぎているように感じましたし、エンディングに向けて、急ぎすぎているようにも感じました。
エンディングが陳腐
とにかくラストが陳腐で、とても残念でした。
「交換殺人」の動機は金だったし、「交換殺人」に同調していたのは恋愛感情が芽生えたからでした。
最後がもっと違った終わり方であったなら、星3つにできたのに・・・。
ガッカリです。
今回は、新しい小説(ジャンル)にも目を向けたい50代男性におすすめの「拝啓 交換殺人の候」を紹介しました。