今回は、絲山秋子さんの小説を4冊、ご紹介します。
1.「袋小路の男」
50代男性へのおすすめ度 ★☆☆☆☆ ← 50代男性は読まなくていい
あらすじ
内容紹介(「BOOK」データベースより)
高校の先輩、小田切孝に出会ったその時から、大谷日向子の思いは募っていった。
大学に進学して、社会人になっても、指さえ触れることもなく、ただ思い続けた12年。
それでも日向子の気持ちが、離れることはなかった。川端康成文学賞を受賞した表題作の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」を収録。目次(「BOOK」データベースより)
袋小路の男/小田切孝の言い分/アーリオ オーリオ
感想 2年経ったら忘れちゃった!
「袋小路の男」は、2020年10月12日に読了したとメモにありました。
そのメモの感想があまりにも短いので、読み返してから公開しようとしたのですが、「読んでも同じ感想なんだろうな」と思い、再読はやめて短いメモの内容のまま公開することにしました。
と言って、いったん公開したのですが、それではブログにアクセスしてくれた方に申し訳ないような気がしたので、2023年3月に読み返して追記しました。
絲山秋子さんの小説を読むのは「袋小路の男」で2作品目です。
「袋小路の男」は、3話の中編小説が収録されています。
「袋小路の男」を読んで、絲山秋子さんの小説は「もういいや」っていう感じになりました。
袋小路の男
読み進めている時の私の心の声を記します。
村上春樹さんの文章にそっくり
→ 僕ではなく、女性の私が語る村上春樹さんのストーリー
→ だんだん、退屈になった
→ 文章の切れが悪い
→ 袋小路には2つの意味がある
結局、なんだかよくわからない。
小田切孝の言い分
サラサラ読めるのがいい。
昔、心理学の簡単なテキストの中に、「あなたは好きな人と一夜を共にして別れるか、何もないまま毎日会い続けるか」と書かれていたことを日向子はぼんやり思い出す。
その心理分析の結果がどうだったかは思い出せない。
どっちを選ぶのか、そんなことはもうとうの昔にはっきりしてしまった。(79ページ)
引用した文章は、この後に効果的な働きをします。
よく組み立てられていて、上手な構成だと思いました。
でも結局、何が言いたい小説なのかわかりませんでした。
アーリオ オーリオ
「アーリオ オーリオ」も文章とストーリーの雰囲気が村上春樹さんの短編ぽいです。
開いたままの窓から出て行ってしまった蝶が戻ってくることは二度とない。
彼は蝶一匹分の空虚とともに部屋の中にとどまっていて、頭の中でその軌跡を追うことはあっても、野原に網を持って出ていくことはしない。(144ページ)
彼は主人公です。
自ら出て行った蝶を追いかけることはしません。
「袋小路の男」に掲載されている3話の小説に共通しているのは、物語の主人公が積極的に好きになった人を追い求めないということです。
主人公は、自分の中に恋しい人を取り込もうとしないのです。
希薄な人間関係の中に自己を置き、ことさら男女関係において自分が傷つけられないようにします。
男女関係のストーリーなのに、男女が距離を置くままなので、読者の私はまどろっこしくなります。
「こんな人生で楽しいのかよ?」って気持ちになって、だんだんストーリーを俯瞰して読むようになりました。
結局、そのままエンドになり「なんなのこれ」って感じで読み終えました。
「こんなつまらない小説よく書けたな」が、「袋小路の男」の感想です。
ですが、絲山秋子さんは、エッチなシーンの描写や雰囲気を表現するのは上手いです。
女性作家にしては、めずらしいのではないかと思います。
最初に読んだ「スモールトーク」が良かったので残念です。
「スモールトーク」は、「車の運転が好きで、ついでに女を抱くのも好きなおっさんにピッタリ」の小説です。
ぜひ読んでみてください >>> 「スモールトーク」
2.「海の仙人」
50代男性へのおすすめ度 ★★★☆☆ ← 50代男性が読むと新しい発見があるはず
あらすじ
内容紹介(「BOOK」データベースより)
碧い海が美しい敦賀の街。ひっそり暮らす男のもとに神様がやって来たー。
「ファンタジーか」「いかにも、俺様はファンタジーだ」「何しに来た」「居候に来た、別に悪さはしない」心やさしい男と女と神様。話題の新鋭、初の長編。
感想 面白かったです!
この感想は、2021年1月の読書メモを頼りに書いています。
絲山秋子さんの小説を読んだのは、本書「海の仙人」で3冊目。
著者初の長編小説ということです。
前の(袋小路の男)の感想で、絲山秋子は「もういいや」っていう感じと言っておきながら、続けて新しい本を読み「この本は面白かった」と言うのだから、私も本当にいい加減です。
でもそれが素直な感想です。
「海の仙人」はとても良かった。
うるっとするシーンもあって小説ってこういうもんだよなと思わせてくれる作品でした。
文章も読みやすく、こういうのが最近の小説の文体なんだろうと思います。
表現力や細かな描写が物足りない部分もあるけれど、足りないくらいがちょうどいいのかもしれない。
絲山秋子さんの他の作品も読んでみたいと思いました。
3.「逃亡くそたわけ」
50代男性へのおすすめ度 ★★★☆☆ ← 50代男性が読むと新しい発見があるはず
あらすじ
内容紹介(「BOOK」データベースより)
「どうしようどうしよう夏が終わってしまう」軽い気持ちの自殺未遂がばれ、入院させられた「あたし」は、退屈な精神病院からの脱走を決意。
名古屋出身の「なごやん」を誘い出し、彼のぼろぼろの車での逃亡が始まった。
道中、幻聴に悩まされ、なごやんと衝突しながらも、車は福岡から、阿蘇、さらに南へ疾走する。
感想 二人の会話が面白い!
この感想は、2021年3月の読書メモを頼りに書いています。
絲山秋子さんの小説を読んだのは、本書「逃亡くそたわけ」で4冊目。
結構はまってます。
精神病患者の男女が福岡の病院を脱走して、鹿児島まで車で逃げる(旅行・ドライブ)する話。
「逃亡くそたわけ」は、
- 脱走した二人の会話が面白い。
- 軽い雰囲気がいい。
- 紀行文としても読めます。
4.「イッツ・オンリー・トーク」
50代男性へのおすすめ度 ★★★☆☆ ← 50代男性が読むと新しい発見があるはず
あらすじ
内容紹介(「BOOK」データベースより)
引っ越しの朝、男に振られた。やってきた蒲田の街で名前を呼ばれた。
EDの議員、鬱病のヤクザ、痴漢、いとこの居候ー
遠い点と点とが形づくる星座のような関係。ひと夏の出会いと別れを、キング・クリムゾンに乗せて「ムダ話さ」と歌いとばすデビュー作。
高崎での乗馬仲間との再会を描く「第七障害」併録。目次(「BOOK」データベースより)
イッツ・オンリー・トーク/第七障害著者情報(「BOOK」データベースより)
糸山秋子(イトヤマアキコ)
1966年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後住宅設備機器メーカーに入社、2001年まで営業職として勤務。
03年「イッツ・オンリー・トーク」で第96回文學界新人賞を受賞。
04年『袋小路の男』(講談社)で第30回川端康成文学賞、
05年『海の仙人』(新潮社)で第55回芸術選奨文部科学大臣新人賞、
06年「沖で待つ」で第134回芥川賞を受賞
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
感想 軽くてよかった!
この感想は、2021年4月の読書メモを頼りに書いています。
この「イッツ・オンリー・トーク」は、絲山秋子さんのデビュー作だったのですね。
絲山秋子さんの小説を読んだのは、本書「イッツ・オンリー・トーク」で5冊目です。
自分でもビックリのドはまりです。
なかなか、一人の作家さんの小説を5冊も読まないですよ。
「イッツ・オンリー・トーク」は、軽くてよかったです。
併録の「第七障害」もよかった。
絲山秋子さんの小説は、「読者が小説の世界観や登場人物に共感しなくていい、ただ読み進めればいいだけ」なのが良いのだと思います。
いい意味で、暇つぶしにもってこいです。
今回は、50代男性は読まなくていい「袋小路の男」、50代男性が読むと新しい発見があるはずの「海の仙人」「逃亡くそたわけ」「イッツ・オンリー・トーク」を紹介しました。