「BAD SEX」50代男性へのおすすめ度
★★★★★ ← 50代男性には必ず読んでもらいたい
あらすじ
内容紹介(「BOOK」データベースより)
三十歳未満禁制!オンナのための官能小説。著者情報(「BOOK」データベースより)
LiLy(LILY)
作家。1981年横浜生まれ。N.Y.、フロリダでの海外生活後、上智大学卒。音楽ライターを経て2006年デビュー。現在は雑誌「オトナミューズ」「VERY」「美的GRAND」にて連載。「フリースタイルティーチャー」(テレビ朝日)に出演中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
キーワード
セックス
感想
めちゃくちゃエロくて面白い小説に出会いました!
LiLyさんの小説を読んだのは、この「BAD SAX」がはじめて。
LiLyさんの名前は、女性向けファッション雑誌で何度か見かけていて知っていました。
本のタイトルと表紙にひかれて思わず手にして大正解!
とても面白い本に出合えました!
本のタイトルと表紙のデザインから「エロい本なんだろうな」と思って手にしたのですが、
ホントにエロかった。
30代以上の女性向けに書かれた官能小説とのことです。
「BAD SAX」は6つの短編(チャプター)と、作者のあとがきで構成されています。
同じ人物がいくつかの短編に登場するので、連作短編に近い感じで書かれています。
「この女性にもこんなヤバいエロの要素があったのか」と、登場人物の深掘りができて面白いです。
ちなみに、「BAD SAX」の「BAD」は、「ヤバい」という意味のスラングらしいです。
女性目線のエロが書かれているけどオッサンも共感できることが多い
女ってこんなことにエロを感じるのかと、勉強になる部分が多かった。
例えば、セックスを売りにする若い男と対面したときの
「あまりにも魅力的過ぎて立っていられなくなるほどクラクラしてしまった」
と告白する女性の反応とか。
マイケル・ジャクソンのコンサートビデオを見ていると、
女性が卒倒してしまい担ぎ出されるシーンが何度も映し出されるけどあんな感じなんでしょうね。
いい男を目の前にすると気持ちが高ぶって、自分で制御できないことが起こってしまう。
熱くなって「のぼせちゃう」ということなんでしょうね、きっと。
「そういえば若い時、のぼせちゃうような目線で女の子から見られたことが何度かあったな」と、
当時を思い出している人、結構いるんじゃありませんか?
「あのチャンスを上手くモノにしていれば、これまでとは違う経験ができていた」かもしれない。
「失敗した! あの時ものにしておけば!」というのは誰にもある経験で、
そんな心の描写がいくつか出てきます。
年齢を重ねると性差関係なく「あの当時の思い出」というものがあるものなんです。
男も女も関係なく共感できるエピソードが多い小説なので、
50代男性もスッと物語の世界に入っていけると思います。
読者の淡い記憶を思い出させるカギがちりばめられた、中年以上の男女が好みそうな小説です。
私が気に入った文章
希望に満ちたエンディング
イントロダクションと呼ぶには濃厚すぎたチャプター0に30年もの時間を使ってしまったけれど、やっと膜が破れて私は生まれ、ほんとうの物語は今、ここから幕を開ける。(50ページ)
上記は、チャプター0の締めくくりの文章です。
「ほんとうの物語は今、ここから幕を開ける」というエンディング文が、
希望に満ちていて気に入りました。
あと、「膜」と「幕」がかかっているのも、シャレが効いてていいです。
どうかかっているのかは、本を読んで確認してみてください。
「きもちがいい」を追い求めて
彼の指に髪を撫でられながら、眠りへと落ちていく。もう、このままシーツの中にとろけて消えてしまえたらどんなにきもちがいいだろう。(61ページ)
「シーツの中にとろけて消えてしまえたらどんなにきもちがいいだろう」が気に入りました。
とろけてなくなっちゃったら、きっと、きもちがいいだろうな。
こんなふうに思えるくらいの、きもちがいいことをしてみたいです。
とろけて消えても形状記憶物質のように、目が覚めたら元に戻るならなおさら最高!
何でも手に入る女
だって、強く望んでいたわけでもないのに、私はいつも欲しいものへと勝手に流れ着いてしまうから。そんな自分の運命になんともいえない罪悪感を抱くたび、誰かに罰されたいという願望が湧きでてきては、どうしようもないくらいに身体がうずくの。(87ページ)
この後の文章はヤバいので、ここでは引用しません。
まじヤバい。うらやましいほどヤバいです。
「欲しいものへと勝手に流れ着く」なんて、何ともうらやましい限りです。
私には縁遠いけど、
こういう「欲しいものが何でも手に入りそうな女の子」ってどこかにいそうですよね。
ヨーロッパの方の美少女にいそうな感じです。
結婚願望の強い女
彼より先に自ら言葉にしてしまうことで既成事実を作っていくこのやり方に、彼の気持ちが追いついていないんじゃないかと不安だった。
「どうして泣くの?」(男)
「泣くほど幸せ」(女)
「いやいや、いやいや。これからさせてよ、僕にあなたを幸せに」(男)(130ページ)
「彼より先に自ら言葉にしてしまうことで既成事実を作っていくこのやり方」
この一文とてもいい文章だと思いました。
したたかな女性の気持ち・思考がとてもうまく表現されていると感じました。
「BAD SEX」は文章の表現の良さに加えて、リズムも良いのでとても読みやすいです。
文章に若い作家にはない落ち着き感があって、
50代のオッサンが読んでもスッと物語の世界に入っていけます。
これは、「BAD SEX」に星5つをつけた要因の1つでもあります。
時間って、あっという間ね
「今なら、でも、分かるでしょう? きっと今読み返せば、あれは衝撃ではなくリアルだわ?」
「時間って、あっという間ね・・・。次から次へと季節が過ぎて何もかも変わっていくのに、残酷なくらい、置き去られる。全く変われない、自分だけ」(158ページ)
40代女性二人の会話です。
ここでいう「時間」は年を取る・年齢を重ねるということです。
「自分だけ置き去られる」という感覚は年を取ると誰もが感じることで、
そこは女も男も関係ないと思いました。
私も自分が置き去られるように感じているので、この文章が気に入ったのだと思います。
この文章の前後もとても良いので、ぜひ読んでみてください。
瞬間美のようなヤバいSEX
真面目の上に成り立つ不真面目。セックスに対する免疫も知識もどちらもあり、できる限りのリスク回避が可能なオトナだからこそできる冒険。そういった意味での、瞬間美のようなヤバいSEX。これはもう、人生の中でせめて一度は、上手くやるべき最高の体験。
(303ページ)
すごいな。こんな風に堂々と「やっちぇ!」って言える人は少ないと思う。
私も結構、色んな本を読んできたけど、
ここまであけっぴろげに「やっちぇ!」と言っている人はいなかったように思います。
昔の村上龍さんは、こんな感じだったかもしれないけどね。
著者のLiLyさん自身が「あとがきにかえて」で書いているように、
この小説「BAD SEX」の本題はSEXなので、こんな思い切った表現をされたのだと思います。
自分の著書で思いっきり自分の考えを表明するLiLyさん、カッコいいです。
愉しく乗りこなしていただけたら
たったの一回きりとはいえ、まだまだ明日もキチンときてしまう可能性が高いあなたの大切な人生を、どうか賢く、上手く、愉しく乗りこなしていただけたら・・・。そう願っています。
予期せぬ展開を恐れるばかりではなく、思い通りにはいかないところこそが人生の不思議さだと捉えて面白がってしまえば良いのだと思います。
(308ページ)
官能小説のあとがきに、読者にガンバレと優しく声をかける作家さんはかなり珍しいと思います。
きっとこれがLiLyさんの持ち味なんでしょうね、最後に元気になるエールをいただきました。
ぴったりはまって読者としては嬉しい
冒頭で書いたように、
小説「BAD SEX」を手に取ったのはタイトルと表紙のデザインに引かれてであって、
ジャンルや内容を知っていて手に取ったわけではありませんでした。
なので、どんなジャンルや内容の小説なのか知らないままに読み進めていきました。
読んでいるうちに「なんか官能小説っぽいな」と思うようになって、
あとがきに「この本は官能小説です」と書いてあって、やっぱりと思いました。
「30~40代の女性向け官能小説では?」と思って読んでいたので、
本の内容紹介に「三十歳未満禁制! オンナのための官能小説」と書いてあるのを見たとき、
対象の年代までこんなにぴったりはまるなんてまずないなと嬉しくなりました。
いろいろな意味で私とLiLyさんは相性がいいのではないかと、思ったりしました。
相性のことはさておき、小説「BAD SEX」は、
「女は、男に捨てられると次のセックスのチャンスがなかなか来ない?」
「男も一緒かな?」とか、
「女性向け性風俗」ってどんな世界なんだろうと、
いろいろな想像や妄想を膨らませることができる楽しい小説でした。
LiLyさん、ありがとう!
今回は、50代男性にぜひ読んでもらいたい「BAD SEX」を紹介しました。
「BAD SEX」のように、「エッチなシーンが多めの小説」を他にも紹介しています。
下記の画像をクリックしてぜひ併せて読んでみてください。
【エッチなシーンが多めの小説】