「よき時を思う」50代男性へのおすすめ度
★★★☆☆ ← 50代男性が読むと新しい発見があるはず
あらすじ
内容紹介(「BOOK」データベースより)
九十歳の記念に祖母が計画した、一流のフレンチシェフと一流の食材が織りなす、家族のための豪華絢爛な晩餐会。
そこに秘められた、十六歳の日のある出会いと別れの記憶。
一人の命が今ここに在ることの奇跡が胸に響く感動長編!
感想
「錦繡」に似た雰囲気をこの小説に感じました
面白かったです。
内容紹介に「奇跡が胸に響く感動長編!」とありますが、そこまで感動はしませんでした。
最初と最後に出てくる「ウニ、ヤニ、ハニ、アニ、ムニ、ギニ」というワードが、強く印象に残りました。
最初に登場させたエピソードを最後にも登場させて終わらせる。
このような構成の小説は好きです。
自分はこういう小説が好きなんだと、再確認できた本でした。
このブログでも紹介している「錦繡」に似た雰囲気を「よき時を思う」に感じました。
「どこか切ない」というかそんなところです。
色んな職業の人たちが登場します
「よき時を思う」は、登場人物がとても多く、彼らの人生(エピソード)が、ちょこっとずつ紹介されます。
登場人物たちの仕事と人となりが重なる部分が面白いです。
どういった経緯で今の職業についたのかが物語の中で紹介され、そのエピソードが面白いです。
もちろんフィクションなんだけど、「こういう人生の人もいるんだな」と思えるのがいいです。
多くは「苦労を乗り越えて今がある」というケースです。
一方で、「まわりの流れに身を任せて上手くいっている」というケースも出てきます。
その職業についている人だからこその人生観を、ちょこっとずつ垣間見れて面白いです。
「よき時を思う」を読むと、「人生、自分の思い通りにはいかない」というのが良く分かります。
そして、思い通りにいかないときにどうするかのヒントが見つかる小説であると思います。
物語にスピード感がない
「よき時を思う」の良い点は多彩な職業の人たちが登場して面白いこと、悪い点は物語がゆっくり進むことです。
「よき時を思う」は、とてものんびりと物語がすすみます。
30代の時に読んでいたら、たぶん途中でやめていたと思います。
50代になったからこそ読めた気がします。
主人公の家族がみんなおしゃべりで、ああでもない、こうでもないと話し出します。
それが結構長いんです。
それも複数回あって、物語の進行を遅らせています。
そんな部分を読んでいたら、山田洋次監督の「東京家族」を思い出しました。
家族の雰囲気も、会話もなんとなく似ています。
「よき時を思う」は、家族の会話を楽しむ小説だったっけ? と首を傾げながら読んでいました。
仲良し家族のじゃれ合いはもういいから、「早くメインエピソードに進んでくれよ」というのが私の素直な感想です。
「晩餐会が終わった後どうなるんだろう」と楽しみにしているのに、ずっと話してばかりだなとあきてしまいました。
私が気に入った文章
見ていると幸福になるもの
― 見ていると幸福な気持ちになる。それはやがて「もの」ではなく幸福そのものになる。
わたしはそういうものを探して集めてきた。綾乃もそうしなさい。探せば見つかる。探さない人には見つからない。(93ページ)
祖母が孫に語った言葉です。
いいですね。とってもいいです。
私も幸福そのものになる「もの」を探したいです。
でも、旅の思い出の品って、結構これに当てはまる気がします。
自分が買ったお土産を見ていると楽しかった旅の思い出が甦ってきて幸福な気持ちになります。
そのうち「あそこにも行ってみたいな」という気持ちになって、それがいい目標になったりします。
皆さんはどうですか?
今回は、50代男性が読むと新しい発見があるはずの「よき時を思う」を紹介しました。
エピソードの一つに数十年前の約束を果たすというのがあって、ここの文章を読むと目標というか約束って大事なんだと思います。
今のところ他人と長い約束をしていない自分にほっとしています。
本書以外にも「宮本輝さんの小説」を紹介しています。
下記の画像をクリックして、併せて読んでみてください。
【宮本輝さんの小説】